新島繁著『社会運動思想史』書評
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)憾《うら》み

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)社会思想前史[#「前史」に傍点]ともいうべき
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 私たち一般人の日常生活の内外に相関連する社会的現実は、この二三年益々複雑多岐、錯綜、紛乱を極めて来ている。こういう社会の激しい矛盾の有様は、将来どうなってゆくのであろうか。今日このように巨大決裂の予感を感じさせている社会は過去にどのような歴史を辿って来ているのであろうか。そういう現実の根源の推移を司る力というものがあるなら、そして、その法則というものがあるのなら、それを知りたいという心持は、近頃の読書分子の生活欲求の中に強く作用して来ている。歴史を読みたいという人々が著しく殖えて来ているのだが、それは、とりも直さず今日の諸現象を、いくらかでも正確に、本質的に理解し得るきっかけを捕えたい望みであり、古本屋で、ベルリンでは無い古典が多く売れる事実となって現れているのである。
 三笠書房で出版されている唯物論全書の仕事も、今日の我々の周囲をとりかこむ社会の
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