と条件があるからなのだろうか、というところまで考えて見て、書かれなければならないものだと思います。
   佳作三篇[#「佳作三篇」はゴシック体]
 (一)木枯。(奈良)  鷹美艶
 これは小学校の女先生の報告です。特別鋭い観察や感情があるわけではないが、自分の仕事のなかでめぐり会った一情景と感情とを社会の姿として描き出しているところが、一番まとまっていました。書き方が小品との区別を明かにしていないようなところがありますが、ルポルタージュとしては、もっと具体的にその小学校のある地域の特殊性などをはっきり書く方がいいと思います。
 所謂文学的な言葉のあやにかかずらう必要もないと思います。
 (二)母への報告(熊本)  中島敏子
 稚いけれども、母亡いのち一家のために役立とうとして暮している娘さんのひとすじの生活が語られています。
 こんな気取りのない調子で、いろいろ複雑な生活の観察も書かれたらルポルタージュとしてよいものが出来るだろうと思いました。
 (三)仕事場書き抜き  藤川睿子
 地方の町で洋服仕立屋をやっている娘の生活やその気持が出ていると思います。しかし、その率直な表現はよいとし
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