る「秘史」にエログロと違うスリルを感じて、夏枯れしのぎに、いい思いつきのように流行しています。
これらの「秘史」「ルポルタージュ」が真実の軍部批判と戦争批判、日本の平和建設の誠意をどの程度までたたえているでしょうか。二・二六秘史についても、あの事件が日本の侵略戦争遂行のための暴動であったいきさつにはふれないで、青年将校の純情さの一面を浮び出させている。そして、「兵は、共産主義者の反乱鎮圧のために配備されているのだと信じこんでいた」というようなことも平然と書かれ、こんにち政府が共産党鎮圧の空気を挑発しているのと、おのずからマッチするようにあらわれて来ている。
わたしたちのファシズムとの闘争は、微に入り細をうがって、現実に密着したものでなければならないというのは、ここのことです。下山事件をみても、一ヵ月の間、検察庁は他殺か自殺か、わざと不明瞭にしたまま、ひっぱってきている。下山夫人が妻として良人の自殺を直感して、身辺の者にそのことを洩らしたという事実さえ(八月三日毎日)今日まで公表させませんでした。夫人はどういう圧力に強要されたのか、自殺なんてとんでもないということばをくりかえし公表させられていました。そのために、事件がわけがわからないものであると一緒に、下山氏に対する、また遺族に対する世間の人間的な同情さえそらされている結果になってしまっている。下山事件は国鉄整理と労働者階級の弾圧のために実に政治的に利用されました。
三鷹事件は、数名の共産党員を検挙して、その中に真犯人があるように宣伝されています。しかし、次の事実は事件の核心に関係しているにもかかわらず、商業新聞には発表されていません。それはこういう事実です。事件当夜、立川市の警察署長は立川国警から電話をうけて、八時半頃三鷹附近で事件がおきるから注意して警戒にあたれと、命令をうけたと二十七日『アカハタ』記者に語っています。電話をかけた立川国警署長は、「同様な意味の電話が国警本部から八時半頃あった」と語っている。その電話は八王子管理部から国警本部へ入ったものであるが、この電話の「入手径路は捜査されていない」(八月二日アカハタ)。この電話でみれば、何処よりも先に国警本部が事件の起きることを予知していたわけです。電車がぶつかってめちゃめちゃになった三鷹の交番に警官は一人もいなかったという事実は何を物語るでしょうか。捜査のすすむにつれて三鷹の組合の副委員長をしている石井万治という人は嫌疑をかけられている書記長の自宅を訪問し、他所へつれて行って饗応し、ノートをひらいて、緊急秘密指令三百十一号、三百十八号というものをみせ、あなたのことについては骨を折るという話をしています。その指令三百十一号には、突発事故が起きたらできるだけ復旧事務を拒否せよ、民同との摩擦を回避せよ、などという文句があったそうです。北海道に偽の指令が流れたことがあった。この指令もおそらくどこかの家宅捜索をすれば、「そこにもあった[#「そこにもあった」に傍点]」ものとして発表されるでしょう。昔からこの手は使われていることです。
ファシストの地下組織が千葉で発覚しています。千葉のファシスト地下組織は、もと上海特務機関中尉である大島軍司という人物を中心にして、千葉県知事、市長、成田山の僧正、千葉市警察署長、その他各地の警察署長とれんらくして、大島は警察パス、外務省パスを所持して、現在は法務庁に籍を持っているそうです。共産党員をスパイにつかって、共産党を非合法に追いこむためにさまざまな挑発をおこなってきたことが判明しました。(七月三十一日アカハタ)
こんにちの商業新聞は、スクープさえ自由にできない状態におかれています。千葉のファシスト組織のことが一行でもかかれた新聞があったでしょうか。わたしたち人民の判断を、公平で、明朗で、正確なものにするためになくてはならない現実の材料を奪うために、政府はどんな手段をとってきているかが分ります。
ファシズムに対するわたしたちの闘いには、これらのデマゴギーと挑発によって事実を不正確につたえられる現実の一つ一つに対して、先ず事実を検討し、それから落付いて判断してゆく理性のつよい歯車がいります。現実的な生活的な勉強がいります。
二 「進歩的」ということ
わたしたちは、みんな生きることを心からよろこんではりあいのある人生を生きたいと思っているのです。ところが、この資本主義の社会の社会悪と矛盾、苦悩惨酷があまりひどいから、わたしたちの心には社会的な自覚とともに、正義感や疑問が起って、次第に階級社会の過去の発展の歴史と未来の展望に対して無関心でいられなくなって来たのです。そこから出発して共産主義を検討し共産党員にもなってゆくのです。
資本主義の社会がゆきづまっているという
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