避けがたい必要ではなかろうか。
 これからのいよいよ錯雑紛糾する歴史の波の間に生き、そこで成長してゆくために、女は、従来いい意味での女らしさ、悪い意味での女らしさと二様にだけいわれて来ていたものから、更に質を発展させた第三種めの、女としての人間らしさというものを生み出して、そこで自身のびてゆき、周囲をも伸してゆく心構えがいると思う。これまでいい意味での女らしさの範疇からもあふれていた、現実へのつよい倦《う》むことない探求心、そのことから必然されて来る科学的な綜合的な事物の見かたと判断、生活に一定の方向を求めてゆく感情の思意ある一貫性などが、強靭な生活の腱とならなければ、とても今日と明日との変転に処して人間らしい成長を保ってゆけまいと思う。世俗な勝気や負けん気の女のひとは相当あるのだけれども、勝気とか負けん気とかいうものは、いつも相手があってそれとの張り合いの上でのことで、その女らしい脆《もろ》さで裏づけされたつよさは、女のひとのよさよりもわるさを助長しているのがこれまでのありようであった。
 女の人間らしい慈愛のひろさにしろ、それを感情から情熱に高め、持続して、生活のうちに実現してゆく
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