いう文章がありました。筆者の矢田喜美子という方は、どなたか存じませんけれども、この記事は、何となく私の心にのこりました。ヨーロッパから最近帰って来たある日本人が、今日の日本をみて、みんなの生活が無計画で、食えないといいながらたかいタバコをプカプカふかしている、政府はから約束をして、内閣がかわればそのまますっぽかしている。雑誌をひらけば現実生活と縁のない理屈をこねている。「現実から足の浮いた、頭でっかち[#「でっかち」に傍点]の日本人」というのが、その新帰朝者の感想だそうです。矢田喜美子さんはそれに同感していられます。
 けれどもね、みなさま。たとえば、あなたがたが、ことしの新卒業生として、無計画でしょうか。専門学校を出て、就職するとき、職場の選びかたをてあたり[#「てあたり」に傍点]ばったりした方があるでしょうか。実にきょうの若い真面目な女性は、精密なプランをもって、経済をやりくり、人生をくみたててゆく努力をしています。女学校を出て専門学校へ進もうという方々は、いわばまだ少女らしさの多い心の一方で、どんなに現実的に、学資のことを考えたでしょう。日本の中産階級は戦争によって、最も生活の安
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