るどの国々をみても、こんどの戦争で日本の軍隊が侵略しなかった土地はありません。そしてそれらの国の果て果てで、平和な生活の中では勤勉な市民であり、思いやりのある若者たちでもあった数十・数百万の人々が、軍の力で気を狂わせられていなかったら、決して行わなかった残虐の数々を強いられました。その軍隊が壊滅した時、軍隊は同じその残虐さで数十万の人々をジャングルや山嶽の間にすてて餓死させ、白骨としました。
アジアの姉妹たちよ。そして日本の女性たちよ。アジアの地図の大半の土地からは、わたしたちが愛した者の最期のうめきがつたわってきます。わたしたちはそのような日本という祖国に生きて、毎日の生活苦と闘いながら同時に人類的なこの苦痛の克服について考えています。
アジアの近代の歴史は、苦しい隷属とそこから解放されようとする闘いの連続でした。印度をはじめとするアジアの諸国は、そのゆたかな天然の資源と、生産の発達が遅れている半封建的社会の条件を利用されて、ヨーロッパの資本主義の植民地または半植民地として、土着の民族のいたましい生活がつづきました。
第二次世界大戦ののち、アジアとアフリカの民族は、こののろわし
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