心に疼く欲求がある
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鋤《す》きかえされる
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)アメリカ式|切抜き《スクラップ》と
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)歴史のすすみの手がたさ[#「手がたさ」に傍点]をおどろく
−−
一
こんにち、私たちの生活感情の底をゆすって、一つのつよい要求が動いている。それは、日本の現代文学は総体として、その精神と方法とにおいて、きわめて深いところから鋤《す》きかえされる必要があるという疼痛のような自覚である。
この欲求は、こんにちに生きる私たち多くのものにとって理性の渇望となっている。
五年来、現代文学は、社会性の拡大、リアリティーのより強壮で立体的な把握と再現とを可能にする方法の発見を課題として来た。そのための試みという名目のもとには、少からぬ寛容が示されて来た。しかし文学現象は、その寛容の谷間を、戦後経済の濁流とともにその日ぐらしに流れて、こんにちでは、そのゴモクタが文学の水脈をおおいかくし、腐敗させると
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