、全人類的犯罪の可能にまで膨脹して来た。誰でも知るように、資本主義社会での政治的方向は独占資本の欲する方向と反対ではあり得ない。資本主義の国々での政治はもとより人民の手にないし、政治家の手にあるのでもない。政治資金を提供する独占資本の力、その力こそ軍隊を持つ国家権力として自身を表現している。第二次大戦の過程そのもののうちに、世界の民主勢力が、ナチス・ドイツ、ファシスト・イタリー、日本をうち破った。その過程に、すでに世界の一部に片よってたまった巨大な資本そのものの欲望の矛盾がきざしていた。
 第二次大戦ののちにつづいておこった熱心な世界の平和運動は、ただ戦争は野蛮である、それはなくさなければならないという宗教的な道徳的な人類の良心の上に立っているばかりではない。世界の社会秩序は、新しい観念の上に建設されなければならないという展望に立っているのである。人類の理性と意志とは、様々な架空の名目、美名で人民同士が互に殺戮しあうような偽瞞の誇りや愛国心にまどわされていてはならない。戦争で底の底までの被害をうけたのは、どこの国でも、人民男女とその子供たちであった。その損害から恢復するための援助という
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