分の家へかけ落ちするなんて……とうていそんな気持になれるもんじゃあありませんわ」
[#ここで字下げ終わり]
まじめくさったおどけた返事に三人は大きな響をたてて笑った。
かたまりになって大声にはなして行くんで客待ちの車夫なんかは千世子のかおをすかし見たっきり、
[#ここから1字下げ]
「いかがでございます御易くまいります、ヘエ団子坂まで……」
[#ここで字下げ終わり]
いやにピョロピョロする千世子の大きらいな様子を見せられないですんだ。
[#ここから1字下げ]
「よっぱらってるとでも思ってるんだ、奴っ!」
[#ここで字下げ終わり]
源さんはこんな事を云って石をけりつけた。
足音がするとすぐ、
[#ここから1字下げ]
「寒かなかったかい案じてたんだよ」
[#ここで字下げ終わり]
母親はいかにもしんみりした親しみのある声で云った。
[#ここから1字下げ]
「有難う、今日は随分面白うござんしたワ、すこしつかれたけれ共――」
「そりゃあよかったネ、も一枚着物を持たせてやりゃあよかったのにってねえ、あとで云ってたんだよ」
「そう、――そんなじゃあありませんでしたワ、とっとっと歩いて来た
前へ
次へ
全192ページ中99ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング