くのを見て居る事が出来た。はでなお召の着物の上に袂や袖口にインクがついて居る銘仙の羽織をひっかけて火の気のわざとない部屋でまじめな気持で一字一字をたどって行った。一句の書きなおしもしずに一日に三十枚四十枚と書ける事は夢中になりやすい千世子を一日中居るか居ないかわからないほどしずかにうす笑いやため息ばかりつかせて居た。
くせを知って居る母親はかるたのまねきや新年の会なども体の良い様に千世子には云わずにことわって呉れた。
健全な目つきと顔色をして毎日毎日勉強して居た。三四度よこしたHの手紙にはあっちのおだやかな生活の状態ときたえられた様にハッキリした自分の頭の事や結婚しろとすすめられるうるっささなんかが書いてあった。特別にいい手紙でもなければ又役に立つ事でもなかったけれ共千世子は雑誌の間にはさんで置いた。
大してHに千世子が刺げきされたと云うわけではなくっても幾分か今までと違った色が生活の上に加えられたと云う事を信じないわけには行かなかった。
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「妙なもんだ」
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とびはじめの蛙の様に腰がすわらない気持でふいと口に出す事もあった。かなり風
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