してHを見た。白い指は顔を被ってまっくろいしなやかな髪はやさしくふるえて居た。
 Hの髪のふるえと同じ様に千世子の心もふるえて居た。
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「Hさん、そんなになさらないでネ、男の人がそんなにまでする事じゃあないでしょう、ネ私は変な気持になってしまいますワ……」
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 千世子はそうっとHの頭をかかえて居た。ジッとして居る千世子の頭の中には源さんの様子、信夫の手紙、そうしたものが並んで横ぎって行った。
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「アアいやだいやだ、私はそんな事に一々顔を赤めたり、涙ぐんだりするほど初心な気持はもってもしないのに――どっかへ行っちまえば一番いいんだ、私の知らない人の居るところに行けば、行ったところで世の中のうちならやっぱり同じ浮世なりけりなんだ――アアア私はほんとうに――」
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 千世子は皆をつきとばしてどっかへ行ってしまいたくなった。
 声をあげて泣きたいほど、千世子は何とも云われない気持になって居た。
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「何故Hさんはこのまんま動きもしない食べもねもしない美術品になって居なかったんだろう。

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