ぎて居る」
[#ここで字下げ終わり]
 そう思いながら千世子は「恋を恋して居る時が一番悲しさも嬉しさもすきのないまじりっけのないものになって感じられる」と信夫をさとす様に思った。
 手紙をもとどおりたたんで、先のところにはさんで引き出しをしめるとかるく頭をふって笑いながら西洋間に行った、何にも知らない母が「随分かかったんだネエ」と云ったのにも只笑ったばっかりであった。
 深い椅子によりながら立つ三時間ほど前のおちつかない時間に自分の心をこめてとにかく書いた文を女からこんな気持でよまれると信夫は想像さえすることが出来ないに違いないと、Hの森の様な髪を見ながら思って茶化した笑いさえもらした。
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「私位の年ならこんな文なんかよこされるとまっかになってしまう筈なんだが……」
[#ここで字下げ終わり]
 こんな事を思うとフイと道化た気持になってしまった。すっきりした棒縞のお召を着た上に縮緬の羽織を着て、千世子はHと父親と弟とで白山から電車にのった。

        (十一)[#「(十一)」は縦中横]

 電車にゆられながら千世子は何となくHとはなれてしまいたくない様な、一
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