石油の都バクーへ
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)定期市《ヤールマルカ》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)見ると、|玉ころがし《ルーレトカ》に似た
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うるし[#「うるし」に傍点]のような匂いのする
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一
一九二八年九月二十八日、私ともう一人の連れとは、チフリスから夜行でバクーへやって来た。
有名な定期市《ヤールマルカ》が終った朝、ニージュニ・ノヴゴロドからイリイッチ号という小ざっぱりした周遊船にのって、秋のヴォルガを五日かかってスターリングラードまで下り、そこからコーカサス、チフリスと経て、アゼルバイジャン共和国の首府バクーへ来たのであった。
ソヴェト同盟へ来て八ヵ月目ぐらいの頃であった。いろいろな気持など、その時分は到って漠然としていたのだが、それでもその旅行の計画の中には、バクー見学とドン・バス炭坑見学とだけは繰りいれられてあった。ドン・バスの方はその前年全ソヴェト同盟のみならず世界の注目をひいたドイツ技師を筆頭とす
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