ある。三年ぐらいはたちまちその条件のうちで経過する。その三年間就職しつづけた人々と、新たにそれから後に就職する人との間にはおのずから隔たりがあるのが普通である。安倍さんの青年時代のように、学校生活につづいて研究の時間がのびやかに前途に展《ひら》けていないのが今日の青年の生活が歴史からうけている条件である。世俗にみて就職がおくれることを問題としなくても、学問上の研究をその間途絶えさせることもある。
現代の若い心は、さけがたいそれ等の義務に直面していて、雄々しくそれを果していると思う。戦争が世界的な規模になって来ている今、若い世代は次第に沈着にめいめいの運命を担って最善をそこにつくしてゆく健気な心になっている。友情もそれらの波瀾を互の人生的なものとして凌いで行こうとするその雄々しさと思いやりとで結ばれて行くように変化しつつあると思う。友情も新しい形でその可能を見出されつつあるのである。
青春というものは誰にとっても経過する人生の一時期であるけれども、その経過のしようによっては、歴史が全く夥しい人々の青春を単に消耗するという結果になる。この事実を、人々はどう考えているだろう。一人一人の青
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