生活の様式
宮本百合子

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(例)200[#「200」は縦中横]
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     芍薬

「これ 八百屋の店先に バケツにつけてあったの。一束八銭よ これだけで十六銭 やすいでしょう。こないだ夜店で一輪五銭の蕾買って来たら みんなさいて迚もうれしかった――この色少し気にいらないんだけれど……」
   対照
「このチューリップは傑作だ。サティンのようにつやがある。」
 そして、わきの紙をとって「一輪いくら? 一本五銭?」とかくと 咲 その鉛筆をとって
「四本十銭とかく」
「じゃあっちはいくら?」
 赤い芍薬をさす
「五銭?」
「それに 一たしただけ」
「なかなかよろしい」
 咲、自家用にのって、やすい花屋をさがして吉祥寺前の問屋とかで買って来た由。
 芍薬二輪ぐらいずつ大切にいけられている、

     額

「これいい絵ね だれの?」
「淳さんの、恐らく淳さんの一番いい絵じゃないかって 云われているの、
 鶴さん大自慢ですよ 俺が其を見つけたって――」
「いくら」
「五円 お礼にあげたの、
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