生活の道より
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)略《ほぼ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三四年十二月〕
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今年の一月から半年ばかりの間、私は大変非人間的条件の下で生活することを余儀なくされた。
今になって見ると、その不自由な生活の終りに近くなってからのことであるが、私は心臓が弱って氷嚢を胸に当てていないと、肺動脈の鬱血で咳が出て苦しい状態にあった。
そういう或る日、塵くさい木造建物の二階の窓際で髪を梳かし、少しさっぱりした心持になって不図わきを見ると、二三冊の本と一緒に「ローザの手紙」という茶色表紙の本が目に入った。
手にとって見ると、ローザ・ルクセンブルグがヨーロッパ大戦中三年四ヵ月の間監禁生活を強いられていた、その期間にカール・リープクネヒトの妻にあてて書いた手紙が集録されたものであった。
ところどころ、それとなく拾い読みをしては私は激しい読書の飢渇を医やしたのであったが、そのような条件の中で偶然私の視野に入って来たこの小さい一冊の書翰集は二様、三様の感想をそのときの私の心
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