念すべき一晩をゆっくり、集団的に、楽しみの裡に階級的意識を鼓舞されつつ過すのだ。
 ――……ソヴェトの労働者たちが世界プロレタリアートにとっての記念日だけを本当の祭日にしてるところは、さすがだ。そして、その祭日の過しかたも各々家へ引こんで個人主義的にやるんでなしに、クラブへ集ってやるところもソヴェトらしい。
 ――なかなか勉強になると思うんだ。あっちのやりかたを見ると。苦しい時だけ、争闘の必要が起った時だけ、急に工場でかたまるんじゃない。ふだんから、機会ある毎に楽しむ時にも男も女も集団的にかたまって、階級としての団結力の強化をはかってる。
 ――然し、ソヴェトは建設期だろ。階級としての富農や成金に対して断然指導勢力を持ってるのはプロレタリアートじゃないか。
 ――そうだ。特に五ヵ年計画の三年目になってる現在では、国内の問題でプロレタリアートが階級的に揺ぐ点なんか在りようない状態だ。が、忘れるな。プロレタリアートは階級として地球をぐるりと一まわりしているんだ。地球六分の五を占める資本国でプロレタリアートがどんな情勢の下にあるかということをソヴェトの男女は念頭にもってる。それに、ソヴェトの
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