けだ。工場や役所じゃほかの番の者がどしどし働いてるんだ。プロレタリアートのほんとうの一月の記念日は一日じゃない、九日にやるんだ。
――はっきりしてら! 全く元旦だなんて、搾取国のプロレタリアートにとって目出度《めでたく》もへったくれもないわけだ。闘争の新年度第一日ってもんだ。
――ソヴェト同盟に正月ってもののないの分ったろ。
――分った。従って女子供が特別なことをやるってこともないわけさね。
――女だって、生産単位としてソヴェトでは男とすっかり同じだ。同じ労働は同じ賃銀を払われる。五日週間で働いてる。元旦だって平日だ。番に当った者だけが休む。特別なことは何にもない。ただ、大晦日の晩、労働者クラブで何か催しがある。芝居とか、キノとか、音楽とか、一家揃ってそこへ行って、暖い、明るい、楽しい年越しするわけさ。
――ねえ、オイ! ソヴェトの労働者っていうと、その話だけでも、どうも偉くがっしりしてやがるみたいだが、そいでもいつかヘベレケになることもあるのか?
――モスクワへ行ったばかりの時分は、よくウォツカの瓶握ってひょろついてる奴を見たもんだ。焼酎みたいなものなんだから、迚もまわる
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