溌剌と亢奮を示した古い社会からの既成作家たちが、彼ら自身の習慣に戻ったのだ、とも見られる。つけやき刃なら、それがはがれる時になっていたとも見られよう。
 民主的文学の歴史にとっては重要なこれらの推移を経たのち、第三段目として現在が来た。何年もの間『文学新聞』一枚さえその手には入らなかった日本の作家たち、そしてまたソヴェト文学の熱心な支持者たちが、びっくりするほど多勢の、新しい名前で充満した今日ソヴェト文学の領野があらわれた。これらの作家たちのほとんどすべての人々は、男も女も十月には赤子であった人々である。あどけない、碧い眼をしたオクチャブリャータ(十月の子)であった。ピオニェール、コムソモールとしてソヴェト社会生活のうちに育ち、ラブ・セル・コル活動をとおして、文章というものをかきはじめ、やがて一つの物語を綴るようにもなり、正規の文学活動家となった人々である。ソヴェト同盟の社会的達成そのものとして現れ、最近三十年の新社会の歴史がこれらの人々の血肉のうちに脈うっているのである。農村・工場・学校・諸経営から前線に赴いて民主主義を防衛して闘った勇ましい一人一人の人生が、ナチ軍の狂信的な一個のオ
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