ているような愛らしい誇ある婦人無電手をもたらした。そして、各雑誌・新聞などを中心とする|労・農通信員《ラブ・セル・コル》の広汎な発達は、大戦前後に、どっさりの前線報道員を生んだ。日本によく知られているシーモノフやゴルバートフの経歴は、いかにも新しい社会の作家らしい、経営内の文学サークルから彼らの文学的才能を開花させ、やがてその地方の作家同盟の組織に結ばれてきている。このように、ソヴェト同盟という社会主義社会では、一人一人の男女市民がその能力・才能と生活経験において独特な幅と質とを賦与されているという事実を、しいて無視し、さげすみ、誹謗して自身の壊滅の素因をつくったのがナチスであった。
 こんどの大戦に際して、ソヴェト同盟で書かれたすべての前線文学・報道文学が、文学的に優秀であったろうと想像することはできない。きっと型も出来、紋切り型の感情描写もあり、敵が貼り紙をつけた固形物のように扱われた場合もあったろう。しかしながら、どうしても無視できない一つの現実がある。それは一九一七年から国内戦にかけての時代に存在したソヴェト作家の数・質と、一九四〇年代、この第二次大戦に際して世界的に活躍したソ
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