人たちがこれからの社会をどうみているかといえば、ほとんどすべてが政党でいえば、「真中から左」を立ち場としているということにも、真実のよりどころがある。平和は、帝国主義の戦争に賛成しないものによって、はじめてうそとかけひきなしに確保されるのであるから。『太平』という雑誌の十月号は「欧洲の女性は前進する」という題で、ドロシー・D・クルックルという婦人がこの事情を説明して書いている記事をのせている。

 このたびの戦争によって世界には未亡人が満ちあふれた。ナチス・ドイツは、女性の歎きと訴え、人民全般の悲傷の思いをふみにじって、戦争中、婦人が喪服をつけることを禁止した。ドイツの人々が、日に日に増大する黒衣の女性をみて、ナチス政権がしかけた戦争が、そのようにドイツ民族を殺しつつあることを知るのをおそれたのであった。日本でも、戦争中戦傷者の発表が奇妙な形で行われた。だんだん小きざみに、部分的に、私たちには総数が一目でのみこめない形で発表された。ナチス・ドイツでは婦人に黒衣を着せなかった。日本ではそういう禁止は出さなかったが、果して生きているやら、死んだものやらはっきりしなくて、実に多くの妻たちが黒
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