いて、
「諸君は、この点をどう考えるかな。とにかく或る行動がされて、その結果が諸君の上へかえって来ているとき、その行動の動機がはっきり自分につかめていないというと――つまり、負わされる責任だけあって負う責任が自分に分っていないというような生活態度を、若い女性としてどう考えるだろう。今度のことにしたって、何かそこに反抗でもあってされたというのだったら、却ってさばさばしたんだと思う。動機らしい動機がない、そのことが寧ろ問題だろうと思う」
岡は、
「いずれ津本先生からもいろいろお話があったんだろうし、僕はその点をよく諸君めいめいで考えもし、話し合いもして、わかったら、もうこんなことは忘れた方が結構だと忠告したいね」
そう云って、ふっと苦笑の翳《かげ》を口辺に泛べた。そして、独言のようにつけ足した。
「もっともあまりかたまって議論していれば、それがまたいけないことになるんだろうが……」
学校では、学生が文学研究のためのグループをこしらえることもとめているのであった。
追試験をしなおすこと、今度だけは処分というようなことはしないこと、教えっこをした学生で、クラス委員になっているものは委員
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