っている興味ある婦人たちのグループがある。その人たちは、十年前には、それぞれ専門学校生徒だったり勤めをもっていたりした人々であった。若い女性の心にうごく願望に導かれて、それらの人はばらばらに図書館に来て、学校の課目や勤めの義務以外の勉強をしているうちに、段々互に顔なじみになり、話しがはじまり、御弁当のとき一緒に食堂へ行くようなことから、一つの集りが出来た。互に励しあい勉強しあって、夜が更けてからの気味わるい上野の山内をみんでかたまって帰って行くような扶け合いから、これらの人々は若い女の人たちの集りとしては珍しく、時によっては経済上の援助もしあった。その時分、一番早く一本だちになって開業した女医さんである一人の仲間が、そういう場合、よくみんなのために尽力した。
十年が経ってゆくうちに、或るひとは結婚し、或る人は専門の職業で確立し、或るひとは更にこれまでの職業から、個性のより大きく生かされる仕事に進もうと計画している。上野という地域や、図書館や、わたしにも親しい思い出のあるその珍しい集りが、久しぶりで桜木町の仲間の一人の家でもたれた。集りの仲間は、戦争でちりぢりになっていた。それが今度め
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