党にそういう人々がかたまるのは、その政党が、矛盾だらけの今の世の中の仕組みを押しとおそうと主張しているのだから、はっきりしている。けれども、社会主義の即時断行というスローガンをかかげている日本社会党に、こういう「無職其他」が最も多いということは、なかなか意味深いことである。社会党が、勤労人民の味方のように演説をしながら、勤労人民の苦痛の原因となっている旧い日本の君主に主権のある政治の形をどこまでも守ろうとしていて、それが所謂「民意」であるかのように見せているわけもこの表を見ると、全く肯けて来る。社会党九二名中三九名の「無職其他」、六名の社長重役、一九名の弁護士と並んだところをみて、この党が勤労人民の利益のために奮闘する政党であると思う者は先ずなかろう。
ラジオの政党放送で、共産党の悪口を云わない政党は殆どなかった。自由党、進歩党は、それだけを自分の党のよりどころとして、共産党の悪口を演説したのであったが、開票の結果、共産党は、代議士こそ婦人一名こめて五名だけであったが、大体二百万票近く投票されていることがわかった。共産党が一つの政党として人々の前にあらわれてから、僅か六ヵ月足らずしかたっていない。しかも全く地盤というものをもたず、妨害と悪口のさなかで、こういう結果を見たことは、深く私たちを考えさせずにはおかないのである。
外国記者が、開票後、議員の資格再審査をしなければならないと云っているのは当然である。おどろくほど戦争協力者がまぎれ込んでいる。軍需参与官やら、海軍司政官までが当選しているし大日本婦人会の理事で当選している婦人もある。
婦人代議士は、三九名も選出された。そして、今のところ、人気の焦点となっている。けれどもしんみりと考えたとき、私たち婦人のこころに湧いて来る思いは、果して新聞の人気に等しい頼もしさであろうか。
連記制のために、婦人が意外に当選していると云われている。選挙そのものが人気投票のような気分で行われ、人民の生活について政治的にはまるで逆の考えを抱いている党の、ただ有名な人の名を並べたということが云われている。婦人のこのような多数の当選は、一般の政治に対する理解が深まっているというよりも、却って程度が余りひくいので、映画女優の人気投票でもあるかのような結果になった。
当選した婦人代議士たちの抱負について読むと、この批評の当っていることを
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