はないと思える。やはり根本には、総選挙というものが、わたしたち一人一人の生活の打開のために、どれほど大切な関係をもっているかということについて役人たちがしんから真剣な気持をもっていなかったからであると思う。民主的な選挙がされなければ日本は破滅だということについて実感がなかったからであると思う。
 このいい加減な気分は、もっと大きく、選挙の結果にあらわれている。
 自由党 一四一名  進歩党 九三名  社会党 九二名  共産党  五名
 協同党  一四名  諸派  三九名  無所属 八〇名  計  四六四名
 右の表を見て、誰が今度の総選挙が、民主の勝利した選挙であったと考えるであろう。当選した各党代議士の職業をひととおり見わたそう。
 職業   自由 進歩 社会 共産 協同 諸派 無所属
 社長重役 五七 二九  六  ―  三 一三  一〇
 弁護士  一七  九 一九  ―  ―  一   三
 会社員   三  三  七  ―  ―  一   二
 医師    五  一  ―  ―  ―  三   一
 農業   一四 二一  五  ―  六  三   三
 役人    九  三  一  ―  二  一   六
 漁業    三  一  ―  ―  ―  ―   二
 酒造業   一  五  ―  ―  一  一   二
 著述業   四  二 一〇  四  ―  二   六
 教員    八  三  三  ―  一  二  一七
 無職    六  四  四  ―  一  四   六
 其他   一一 一二 三五  一  ―  八  二〇
 僧侶    三  ―  二  ―  ―  ―   二
  計  一四一 九三 九二  五 一四 三九  八〇
 こうして見ると、一番多くの代議士を出している自由党が、ひと手に五十七人もの社長重役をもっている。これは自由党の当選者一四一人の殆ど半数が、そういう資本家たちで占められているということである。次に、「無職」というのが二十五名もいる。今のこの世の中で働かず稼がず無職で暮せているということは、その人々がわたし達の生活と全くちがう経済の足場をもって不労所得で生きているということを物語っている。生きているばかりでなく、金のかかる選挙にのり出しているとすれば、この「無職」が失業でないということは実に明白である。自由党、進歩
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