て見ると大根の切《きれ》っ端《はじ》やお茶がらと一緒に水口の「古馬《ふるば》けつ」の中に入って居る。
「オヤオヤヘエー」って云いたい気になった。
 別に腹《はら》も立たない。
 其のまんまに仕て置く。
 こんな事をひどく気にして居たら女中なんかと一緒に居られるもんじゃあない。
 幾度も幾度も女中が変って知った事だけれ共、私が手紙を出しとくれと云って先[#「先」に「(ママ)」の注記]ぐ腰をあげる女は好い方である。
 其の家の娘がたのんだ仕事の仕工合《しぐあい》で女中の気持は大抵わかるものだと思う。
 又こないだまで居た、話しにもならない様な女中の事を思い出す。
 顔がかなりで生半分《なまはんか》物が分って、悪い事に胆の座《すわ》った女ほど気味の悪いものはない。
 彼の女も一度だか私の髪を埋めた事が有った事を思い出すとあんなものの手で埋められたのかと思うと髪の根元がムズムズする様だ。いやらしい。
 一体秋になるといつもなら気が落ついて一年中一番冷静な頭になれる時なんだけれ共今年はそうなれない。
 大変な損だ。
 秋から冬の間に落ついて私の頭は其の他の時よりも余計に種々の事を収獲するんだけれ
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