人間の再生の課題であろうと思う。人間は文学の世界において、物に従属させられる人間から、物の主人である人間の現実の生命をとり戻さなければならないであろう。生存の条件の下に自主の力のない運命をくりひろげるものとして描かれている人間の姿は、生活の条件に評価をもって働きかけようとする人間の力の実際で見直されるはずではないだろうか。作家は、社会的な人間としての自分を自身にとり戻して、そのことで観念の奴僕ではない人間精神の積極的な可能を自身に知らなければならないであろう。例えば長篇小説の非文学的な状況の打破も、芸術文学としての長篇の在りようにおいて見きわめられなければならず、そのために、くりかえしなおまた再びくりかえす現実の必然として、作家は創造的な批判の精神を溌溂と発揮し、文学の対象としての人間の歴史的な個性的なその動く姿を、作品のうちに正当な相互関係で甦らせなければなるまいと思われるのである。[#地付き]〔一九四〇年八月〕
底本:「宮本百合子全集 第十二巻」新日本出版社
1980(昭和55)年4月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
親本:「宮本百合子全
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