復興したであろうか。声が響いているばかりで、現実には新たな文芸思潮というべきものも生れなかったし、新しい意味を持った作品の一つも出現しなかった。
この実際の事情は、文芸復興を提唱した一群の作家たちにいい作品を生むためには先ず古典を摂取せよという第二の声を起させた。作家の間にバルザック、ドストイェフスキー、スタンダールなどの読み直しが流行したのであったが、この古典の読み直しに際しても所謂《いわゆる》新しいリアリズムの解釈法が附きまとって、例えば、バルザックについての目安は、このフランスの大作家が王党であったにも拘らず小説に描いた現実は当時のフランスの歴史を進歩の方向で反映している、即ち作家の社会的見解などにかかわらず、小説はそのものとして進歩的なものであると云う文芸復興提唱者たちの日頃の持論を裏づけるところに置かれた。歴史的な生活感情の相異に対する敏感さを欠いた古典のかような味い方が、当時の古典流行から何一つこれぞという文学上の収穫をもたらさなかったことは、むしろ当然というべきではないだろうか。このような古典研究から導き出されたものはロマン派のギリシャ文化への憧憬、日本の古代文化への超
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