される。自分たちに信じられないおおっぴらさ[#「おおっぴらさ」に傍点]で、きまじめさで、フランネル・シャツの男が、自分たち階級におとなしく帰属しているべきはずの女を性の自覚と解放に誘ってゆく。――D・H・ローレンスをしつこく非道徳漢として糺弾したのは、彼と別の社会群に属す男たちの不安と嫉妬であったといえるかもしれない。
 D・H・ローレンスは、あらゆる自然現象のうちに、ほとんど神秘主義に近い生命感をうけとった作家であった。自然のすぐれたつくりものである人間が、男も女も、微妙につくられた肉体と精神の作用を傷けることがより少い生存の条件というものを、ローレンスは求めた。彼はそれらを、自分の感覚から出発し、感覚にかえって結論する方法によって求めた。ローレンスは次のように考えた。ほんとうに男と女とが愛しあい、互のうちに、めいめいの存在のよりどころと感じるなかであれば、互の肉体のどの部分もみな尊敬されるべきである。愛を表現する精神の働きばかりでなく、それと全く等しく愛を表現し、生命の調和をつかさどる肉体の機能も、そのまままざりものなしに卑屈なはずかしがりなどない見かたと、扱いかたがされるべきであ
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