女性の歴史の七十四年
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)瞠若《どうじゃく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四一年一月〕
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 私たち日本の女性は、これまでの歴史の中で、はたしてどんな政治的な経験と呼ばれるものをうけついで来ているのだろうか。
 自由民権時代に、岸田俊子その他の若い女性が活躍したことは周知のとおりだし、大正末期から昭和六七年頃までの期間、多くの若い婦人が政治的な関心をめざまされて活動したことも、まだ記憶に新しいことだと思う。
 維新の風雲の間を奔走した女のひとたちはもとより少くなくて、それらの婦人たちは歴史の波瀾のうちに生死をも賭したのであったが、総ての時代を通じて印象を辿ってみると、日本の婦人一般にとって政治的な活動をする婦人は、すぐ一種の女傑になってしまって、家庭生活を中心に朝夕を送っている人々の実感からどことなし一歩はなれた存在となって来た傾きがつよいと思われる。
 明治十四年に十九歳であった岸田俊子が、三年の女官生活から一直線に自由党の政治運動に入って行った過程は、いか
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