ス時代は文学作品ばかりでなく、絵画に彫刻に雄大な作品が花と咲き満ちた時期であった。けれどもじっと見ていると、ミケランジェロの絵のなかには何か憂鬱がある。有名なバチカンの壁画など見ていると、宇宙的なミケランジェロの雄渾さとともに一種のみのがせない憂鬱がある。ミケランジェロの伝記を読むと、彼があれほどの才能を持ちながら、法王の我ままと気まぐれのためにどんなに圧迫されたかがよくわかる。ルネッサンスの半面には、まだまだ封建的な苦しいものがあり、法王と芸術家の関係にさえそれが残っていたことがわかる。
当時の法王は、ミケランジェロの才能を認めながら、自分の絶対性を信じる習慣から封建的で、ミケランジェロの芸術家としての人間性を十分認めなかった。ミケランジェロの巨大な才能と大きな人間性のなかには、いつも自分を出し切れない不安があった。丁度デスデモーナが愛と一緒にいつもオセロを恐がっていたと同じように。ミケランジェロは自分の才能と一緒に法王を恐れなければならなかった。
ルネッサンスの表は、華麗豪華な厚肉浮彫の歴史であるが、その陰の部分には封建性が濃くのこっていた。例えばレオナルド・ダ・ヴィンチのモナ
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