。そこに新しい世代の詩があり、歌があり、文学があり、また行進曲があるのだと思う。
 文学は何か現実生活とはなれたもののように考えられている習慣があったけれども、決してそうではない。文学は一つの歴史的・階級的な行動であると云える。行動は生存の意義のために、発展の方向を持つことが当然である。わたしたちはこの多難な社会生活の間で自分の爪先がどっちを向いているかということを知ることが大切である。文学に大切な個性ということも、つまりは社会と、そこに存在する階級と自分とはどういう関係にあるかということを理解し、その関係にどう積極的に働きかけてゆこうとしているかという現実のうちに個性はきたえられる。われわれの一歩は、われわれの一生にとってかけがえのない一歩である。私たちは生きる権利をもっている。良心にしたがって、あることを肯定し、あることを拒絶し、社会と自分のために労作し、生を愛するうたを歌う権利がある。その権利を知り、実現する義務をもっているのである。
 文学につれてよく才能ということが云われる。わたしは才能ということにふれて語られている一つの忘られない言葉をここにしるそう。
「すべての才能は義務
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