どういう政党に投票してよいか分別もつかないで、資本主義の搾取というものに疑問をもたない人間として育ってゆくとしたら日本の民主化というようなことは実現しないどころか、政府の無力のため或は無力であることを標榜するより深刻な打算によって、人民大衆は、全く奴隷化した状態におとされてしまわないものでもない。自分の国の政府によって、人民が隷属の立場に追われるようなことを誰が承服出来よう。
このような現実を現実として見て、それを改善の方向に導こうとする意志。それこそ今日の日本人民にとって生きている文化性であり、文学の内容であり、その素材である。今日の文学は芭蕉の風流より、もっと社会的要素において深刻であり、客観的必然に立っている。
愛情の問題においてもデスデモーナのハンカチーフは捨てられなければならない。婦人の生活も、自分の支配者である男のために、女らしさを粧うのではなく、ほんとうに人民の幸福をうちたててゆく道で互に頼りになる男女として、ほんとうに女らしく生きられる条件をつくり出してゆく情熱でなければならない。のぞましい社会の招来のために、その建設の方へ一歩一歩と前進の旅をつづけなければならない
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