学は逆に云えば、最も痛烈な人間的生の発現である。
 私どもはここで、一つの現実的理解に到達した。文学の発展にはそれにふさわしい社会的な基盤が必要であり、勤労階級の生活の安定の要求は全くぴったりと私たちの人間らしい文化の要求と一体のものであるという事実である。改正された憲法は男女を平等としている。しかし現実の生活で男女の労働賃金は同一でない。男女はひとしく選挙権も被選挙権もあるといってもその土台になる経済的・社会的生活のひとしさはまだまだ実現していない。労働組合や、すべての民主勢力が要求している賃金、待遇改善の問題、家事の社会化の実現などは、婦人の二十四時間の内容を男の二十四時間の内容と、おのずからのちがいはありながらも、その社会的質の高さでは等しくしてゆくために、絶対に必要な前提条件である。
 あらゆる文化の基本になる教育についてみよう。憲法は、すべての人は教育を受けることが出来るといっている。だが今日、毎日ちゃんと通学している学生が、殆ど有産階級の子弟だということは、民主日本の建設にとって、どういう重大なマイナスであろう。学生も食うために闇屋さえやっている。憲法で云われているだけでは
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