制支配権力が、それをうけ入れよう筈はない。人民解放のための全運動とともにプロレタリア文学も殺された。女も率直にものをいいはじめた。ほっておけば、考えも、いうことも、行動も大人になる。男につよい影響を与える女の心と言葉、動きをいまのうちにふさごう。手足を押えようと、解放運動とともに、婦人がほんとの自立にすすむことを否定されてしまった。こうして圧殺されてしまった長い年月が一九四五年の八月十五日までつづいたのであった。
戦時中、少年であり青年であった人々は、どういうふうな生活をして来ただろうか。そのなかには、特攻隊へ連れ出された人もあったろう。徴用でいろいろな職場で働き、学徒動員で、生涯の目標を挫折された人も少くなかった。家を焼かれ、肉親と生活の安定を失った人も沢山あるだろう。めいめいの人生に、深い深い傷を受けて、そうして戦は終った。
民主的な日本にしなければならないというポツダム宣言を受諾した。日本の人民を解放し、民主社会にしなければならない責任を、いまの政府は世界から負わされている。云わば、その責任の故に存在を許されている。ところが、今日において民主的な文学というものへ、どれだけの若
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