なさそのものが矢張り何か考えさせるものを持っているのです。
             *
 面白い本と云えば、羽仁五郎『ミケルアンジェロ』小倉金之助さんの、『家計の数学』山の好きな方に、チンダル『アルプスの旅より』又は『アルプスの氷河』など興味あるでしょうし、女の活動面が新しく展かれてゆく一つの姿としてアメリカのイヤハート夫人『最後の飛翔』も心にのこる本です。
 読書でも、音楽をきくことでも、演劇、映画を見ることでも、只見聞くという消費的な接触を進めて、自分の心持ちをそのものに向って展いてうけ入れて考えてゆき、自分の生活の実際との結びつきで、いつも咀嚼《そしゃく》してゆくということが、大事な心の営養のヴィタミンABCDでしょう。
[#地付き]〔一九三九年九月〕



底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年7月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
初出:「婦人画報」
   1939(昭和14)年9月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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