今日きわめて深刻な板ばさみに置かれているのが現実であると思う。活動に堪える力は最大まで社会のためにと、外の仕事に動員されるのだけれど、外の仕事ではつねに、いざとなると女はどうせ家庭に入る者だから、それが一番自然で貴重な女性の任務なのであるから、とたとえば肝心の労務委員会あたりも、女性の職場での福祉については積極に行動されない。
女性の働くあらゆる場面を通じて、どうせ若い女の働くのは二三年という観念がじつにつよい先入観となっている。どうせ二三年なのだから、と粗悪な条件のまま交代させているのだけれど、先頃婦人工場監督官谷野せつ氏が公表された統計では、働く女性たちは三年目ぐらいからぐっと体をこわしているのである。
事変になってから乳児の死亡率の高くなったことや若い母の流産死産のふえたことも、やはり人々の注意をひいたことであった。
婦人は社会的に働いても永続性がないからと、女性の能力の低さの一つとしていわれるけれども、この事の一面には、働かせる側からのどうせ二三年という先入観が原因とも結果ともなって複雑に作用しているのである。
現在日本全国の工場では二百二十余万人の女が活動しているのに
前へ
次へ
全8ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング