な社会勤労は在り得ないことを学んで来ているのである。社会のために勤労の力をつくしている数百万の婦人にとっては、男と同じように働くということばかりに希望がつながれているのではなくて、妻であり母であるという女性独特な天賦の事情を、社会的な勤労の条件そのものの中に認められることが痛切に念願されている。その現実は、従って、明治四十年代の一部の進歩的な人々に考えられているような観念の上での男女平等からずっと具体的に成長してきている。社会的勤労において男対女としての権利を認めるばかりでなく、社会全体のより健全な成育のために勤労の場面で母性が無視されていることから生じる深刻な不幸をとりのぞきたいという真摯な願望が燃えているのである。
昭和十二年七月に事変が勃発してから僅か二年の間にさえ、若い女性たちの重工業への進出は金属工業で男が一六パーセント増したのに対して女子四二パーセント増しとなっている。機械器具製造では男子二一パーセント増しに対して女子三〇パーセントという大幅の増加がある。精巧工業では男子一六パーセント増に対して女子六一パーセント増、特に造船業・運搬用具製造業などでは男子三五パーセント増に
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