。これはまるで、五年間の家庭生活に、はたきを掛けたり、拭いたり、お掃除をしているようなもので、これが済んだら、気持の上にも一段落ついてきっと何か新らしいところへ出られるだろうと思っています。まだはっきりした形をとらない未知のものに対して、楽しい期待を抱いています。
総じて私は気持のきっかけや、変化を主にして、考えたり記憶したりする癖があるので、時日や、時日の長さなどは、随分矛盾したり、間違えたり、忘れたりして、少しも正確ではないのです。そういう意味での不正確さは、時日のことばかりに限らず、本を読む上にも、仕事をする上にも、私の生活全体の上に、あるのかも知れません。
私が一番初めに読んだのはポーの小説でした。誰も傍から教えてくれたり、系統だててくれたりするような親切な人を持たなかった私は、手近に手にとれるものから読んだのでした。その次には、ダヌンチョオ、ワイルドという順でした。それは私が十三四歳の時分で、その頃非常にダヌンチョオが流行っていましたので、かなり沢山読みました。ロシヤの作家のものは全体に好きですけれども、やはりこの人のものだけというようなことはありません。私はまだ誰の作
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