ら興に乗った眼差しで語りつづけた。
「小幡には遊べないの。土曜日んなるとね私が云うのよ、貴方も疲れてるだろうから、今日は休んで寝てなさいってね。そして、私が社へ出かけて行って、主人《おやじ》に金下さいって云うの。小幡が病気で医者にかかるのに金がないから下さいって云うの。――その製粉機会社の主人《おやじ》ってのが、仲仕上りで、金なんぞ一文だって只出すという奴じゃあないんです。――厭な顔してね、何処が悪いんだって訊くの。おなかが痛いって寝てるって云うと、幾何いるんだ、十円下さい、十円なんているまいって云うから、今時医者に一遍かかったって五円とられるんですよ、貴方病人を見殺しにするんですかって云うとね、流石《さすが》のおやじ、事ムの人におい、出してやれってので貰って来るの。小幡はすきやきして遊んで待ってるわ。医者にかかるどころか、日曜は一日それで遊んで来るの。――それに友達が来るしね、仕舞いには皆が便宜を計ってくれてね、会計に居た津田なんて男――大胆な、悪賢い人でしたが、随分危険な真似するのよ、津田さんお花見に行きたいんだが金を都合して来て下さい、十五円て云うとね、うん、よしって、社の方へ沢
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