供は学校が退けてから落付いているところがないんです。親は留守だし。みんなここへ来ます。ここはここでいろんなクルジョークがあって、この壁新聞もそこで出してます。
四つの、樹や鳥の絵で装飾された室が、別に学齢までの幼児のために設備されてある。小さい清潔な白塗の椅子テーブルが、水鉢の上で芽をふきかけているいろんな球根ののった窓のまわりに配列されている。今ここに子供はいない。
――お母さんが少し長い時間買物にでも出かけなければならない。すると、ここへよって小さい子供をあずけてゆきます。
――本ものの幼稚園の仕事ですね。
――母親と子供のためにこれは必要だし、我々にも必要なんです。――子供のための仕事は生きてる子供対手でなしには一歩だって進み得ませんからね。多くのおかあさんがここへ来て始めて子供のために買うべき絵本の見わけかた、質問の答えかた、お話しのしかたを知りましたよ。
┌───────────────┐
│子供をぶつな※[#感嘆符二つ、1−8−75] │
│ ぶつ前に子供の友[#「子供の友」に丸傍点]に相談しろ│
└───────────────┘
モスクワ市中の壁や広告塔に近頃そういうプラカートがしきりに見えた。
――親も近頃は社会教育について違った考えかたをするようになって来ました。然し我々のところにもまだまだ足りない点がうんとある。やって見る。子供がよしあしを決める。それによって我々は修正しさらに前進する。
監督は再び少年少女達の横をしずかに通りすぎながら、日本女にねばりづよい熱情をもってささやいた。
――御覧なさい、彼らはほんとにソヴェトの新人間です。なんと彼らが育つことか!
幼児が図書館にいる時間の割り当てが表にしてかかげられてあった。
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掃除 一・一% かけっこ 一・五%
木積 四・三% 切ぬき 四・五%
おもちゃ遊び 四・八% 弁当時間 五・五%
絵をかく 一〇・三% 唱歌 八・〇%
集団遊戯 一〇・三% お話をよんで貰う 一二・〇%
[#ここで字下げ終わり]
内容がこうしてかわるばかりではない。モスクワ市は外観もいちじるしく変化した。外の並木道《ブリヴァール》をこした市の外廓には、
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