主婦と新聞
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四八年十一月〕
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十一月一日の各新聞のすみに、読者調整のカードがすりこまれていた。
そのカードには、現在どんな新聞をよんでいるか、これからどんな新聞が読みたいかを書きこむ欄があって、希望新聞の名を書けばその新聞へ切りかわることができるしくみになっていた。
何年もの間、読みたい新聞を読めずにいたわたしどもは、これをめずらしいことと思ったが、さてと考えてみると、奇妙な感じがした。書きこみのカードのすられている十一月一日の朝日も毎日も四ページで、大々的にスポーツをとりあげていた。月曜日にあたる日は四ページで、しかもスポーツを派手にあつかうその社のおきまりの企画なのだろうか。それとも、このごろのスポーツの流行にことよせて、一家の中で新聞を読むのは男だけだという点をとらえて、読者確保にのり出したのだろうか。
家庭の主婦の民主化の問題、選挙への積極的な関心がいわれるとき、わたしたちは新聞を読むひまさえもないというのが、痛切な主婦の声として
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