わめているかということを、これらの作家たちは、よりゆたかな心に黙すことの出来ない迄感銘させられているからにほかならない。最も低い、最も御しやすい卑屈さで、目前の役に立つ人間を鋳出していこうとする教育のきまりきった圧力を、よく着実にはねかえし得たものが、つまりは人類の歴史にとって価値ある何かの存在となったということは、歴史が語る実に意味ふかい事実ではないだろうか。
文学が、より美しい、よりゆたかな世界の創造への参加である本質から、すぐれた作家たちがこのような精神成長史としての製作を生んでゆく必然は十分に肯けるわけである。
しかしながら、ここでもう一度私たちを考えさせることがある。どうしてこれ等の人間精神の記念的な作品は、主人公がどれも少年たちばかりなのだろうか、ドオデエもあのように愛らしい女性の幾人かを描いたが、プチ・ショウズの主人公は、少女ではなかった。デュガールの女性たちは「チボー家」をめぐってさまざまな性格を表現しているが、ジャックは、ほかならぬジャックであって、少女ジャンネットにおきかえることは全然不可能である。
これは何故だろう。作者にとって、自伝的な要素が多い主題である
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