若きいのちを
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)夥《おびただ》しい
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 この間うちの上野駅の混雑というものは全く殺人的なひどい有様であったようだ。その混雑の原因の一つは、お盆にあたって故郷へかえる男女の産業戦士たちの出入りであると云われ、密集して改札口につめかけている大群集の写真も新聞にのった。
 東京駅にも棒をもった少女たちが並んで交通整理に当っているようなニュースが出たけれども、こちらは混むと云っても少女が整理を手伝える程度であったのだろう。幾十万の産業戦士たちは大部分が上野を玄関口とする東北地方から出て来ている。このことは、やっぱり私たちに何かの感銘を与えたと思う。
 丁度このころに、新聞はもう一つの報道をのせた。それは少年少女の病気が俄かに激増して来ているという事実であった。この一ヵ年間に東京の五百人以上を使用している大工場に働いている職工さんたちの罹病率は、前年度に比べて約二三割の増加を示しているそうだ。そして、病気の筆頭は結核で、その次は脚気、視力障害がつづいている。十六歳以下の少年少女工は、あらゆる部面に働いているのだが、機
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