て読むと切ない気がした。片親だけで子を育てる母たちが、勝気になり気質が外向性になる、といわれていることが実際であるとして、かりにもしその女親の境遇のあらゆる事情が今の世の中で女のありようと全くちがうほど進歩していたら、それでもなお女の親たちは勝気や男まさりで自分の気質をゆがめられるというようなことが起るだろうか。父親がない子だからと、ひとにからかわれまいと精一杯の善意でうごく女の心さえ、それなり健全な影響を幼い子の上におよぼすとはいい切れない。
産めよ。殖やせよ。この頃のその声である若い友達はあまりああいわれると何人生んでもどこかで何とかして貰えそうで、変に安心して生めるような気がするから不思議なものね、と笑っていった。
結婚資金の貸し出しや多産のひとに奨励金の渡されることや、それもいいことだろうけれど、今日の社会で母という立場が女に負わしている種々雑多な条件について、女は自分からもう一歩あゆみ出た日頃の分別を持っていなければならないのではなかろうか。
職業について働いている婦人と家庭の女のひととは、別々のもののように女性自身が考えていて、いざというときは現在家庭にいる女の生活が
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