ち女の心にまざまざと映ってきて、気の毒にたえられない心持がする。
亡くなったひとは、その坊やをしんから大事にしていたし、ほかの友達の身の上におこった場合についてみても、そのようにして若い母とのこされた子供が、女の子か男の子かということでは、現実の条件がなかなか複雑にかわって来る。妻であり母であるその女のひとの真情に作用して来る外部からの力も、そのひとが男の子をもってのこされたという事実で、女の子一人というときとはおのずとちがって来るのである。
そのことは、ことごとに私たちの日常の間で感じられているけれども、ついこの二三日前、弟のところで赤ちゃんが生れるについて、私たちがその名前を考えてやる役にまわった。家としての初孫だから、私の姑にあたる年よりもたのしみなわけで、子供をもたない兄息子夫婦に、名をつけさせようと思いついたのでもあったろう。
私たちも珍しくさやいだ気持で、あれこれ案を出しあった。女の子の名というのは、いくつか思い浮んで候補にのぼった。ところが男の児の名となると、容易にこれぞという思いつきがない。名として面白いし、いいのだけれど、その子の生れる田舎の習慣で、ある字は余り
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