不安心。やがて、年とともにおとなの生活――両親たち、学校の先生たちに向けられる鋭くてむき出しの批判。それらの批判は、若いひとたちにめざめてゆく、理性の成長の幅に応じてまだ、狭い、しかし、同時にまじりけなくて、日々の営みの大変さにおされがちなため、いつの間にか惰性で生きているおとなにとって、虚をつかれたというショックに似た感情を与える。おとなが、若い人たちと、まじめに話してくれようとしないという不満。
 それは、おとながわれしらず示す人間的卑屈さである。両親の夫婦喧嘩が、子供の人生をどんなにいためつけるかということを考えないで、同じことをしばしばくりかえしている理解しがたいおとなの不条理。おとなはおとなの秘密をもっている。それにふれられそうになったとき、なまいきとか強情とかよぶ。だがそのことは、全身で若いひとが示す人間生活というものへのありかたについてのきびしい質問である場合が少くない。
 十代の理性は、おとなが、日常の必要によっていつか鈍らされ、角をまるくさせられている分別と同じものではない。社会生活の上に固定しているさまざまの約束に、若いひとたちの心と体とがぶつかって、輝くような希望
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