法のスローガンなんぞは全く誤謬であった、したがって、プロレタリア文学の階級性の主張も誤っていたのだ、という考え方はプロレタリア文学運動のそれぞれの段階を、全体的な発展の上に見ることのできない清算主義的な態度であるし、またプロレタリアートの歴史的任務そのものの抹殺であると思います。
 日本において、直ちに社会主義的リアリズムというスローガンをそのまま適用し得るかどうかということは、活溌な大衆的討論によって決定されるべき点でしょう。
 社会主義的リアリズムの問題の提起は、ソヴェト同盟を先頭として国際的プロレタリアートの勢力がますます結集されつつあること、また、各国の広汎な大衆がプロレタリアートの革命に協力する可能性が画期的に高揚してきていることを示す深刻な事業であると思います。これは、プロレタリア文学に関するあれやこれやの問題の一つではない。全プロレタリアートの戦線の前進として、その文学運動が推し進められる基本的発展のまじめな一環であると思います。[#地付き]〔一九三三年十一月〕



底本:「宮本百合子全集 第十巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年12月20日初版発行
   1
前へ 次へ
全7ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング