よりもののわかった人間性を発揮して行くには、それを可能とするように社会的条件をつくり出して行くことに、非常に熱心で、正直でなければならないと思います。自分自身をペテンにかけたり、人をペテンにかけたり、あきらめたり、言訳をしたり、しようがないと思ったりしては、ならないと思うのです。
日本人は、よくしようがないといいます。ロシアでも昔のロシア人はニチェヴォといって、何でも、しようがない、というような言葉であらわすような気風とみられておりました。そのロシア人は、自分たちの運命の主人になったのです。しようがないという人たちが、ロシア人民全部であったらば、どうしてあれだけの大事業が出来たでしょう。
中国の謝冰瑩という、連合国の代表で来ておった人が、上海へ帰りまして、「日本の人は立派です。忍耐強くて立派ですが、日本の人はお魚をあまり食べすぎるらしい、魚は口をききません、口をきかない魚をあまり食べ過ぎるから、日本の人はあまり口をきかない」といっております。そこには、鋭い私どもに対する批評があるわけです。文学的にいっておりますけれども……。
日本人は正しい場合に利くべきように、口をきくべきものだ
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