書館にしろ蔵書の量と種目とでは決して満足と云えないし、日比谷の市立図書館を、東亜の大首都東京市の代表図書館であると云わなければならないことには、些か忸怩《じくじ》たるものがありはしないだろうか。図書館へは学生のうちだけゆくものという先入観が変えられるように、国民の書棚として活きた機能をもつようになったらいいと思う。
その為には、せめて東京には医学、文学、美術、科学等の専門図書館が欲しいと思う。美術学校に公開の美術図書館があり、帝大に医学、文学等の公開図書館があるという工合でも、一般の蒙る便宜は随分多いだろうと思う。旧大名の華族たちが、只虫干をするだけで蔵にしまっている古文書類ももっと天下に役立てられなければならないし、特殊な生産はその代表的な土地にその方面の図書館があってよいだろう。織物に関する図書館は足利とか京都とかに置くという風に。美術館、博物館が付属の公開図書館をもつことも極めて有益だと思う。
坪内逍遙という人がいたおかげで早稲田に演劇に関するものがややまとまったというような偶然にたよっていては、まことに心細いことだと思う。[#地付き]〔一九四〇年十二月〕
底本:「宮本
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